コンテスト受賞作レビュー『メイド・エスコート』
ラノベ的アクション・エンターテインメント大作!
作品名:メイド・エスコート
著者:蒲生竜哉
お薦めPOINTその① 現世と冥界、2つの舞台が絡み合う
主人公のアリスは現世では(普通とは言えないまでも)女子高生として生活しながら、裏社会と冥界では死者を正しく天国へと導く『メイド(冥土)エスコート』として活躍します。当然そのどちらの舞台においてもトラブルが発生しアリスはその解決に臨んでいくわけですが、実はこの2つの世界は時間の流れが全く違うため簡単にはいきません。その時間軸の違いがアリスにとって有利に働いたり、逆に逡巡を許さない切羽詰まった状況を生み出したりと、手に汗握る展開にさらなる拍車をかけてくれます。そしてこういった表と裏の顔を持つ主人公は往々にしてどちらかを演じるような形になるのですが、本作の主人公アリスはそういう使い分けをしません。どちらの世界においても最強の剣士として妥協なく堂々と振る舞い、それが結果として彼女の魅力になっています。
お薦めPOINTその② 読み易さと迫力を兼ね備えたアクション
本作をカテゴライズするなら間違いなくライトノベルです。そしてその理由であり魅力でもあるのが、直感的に読めて想像し易い迫力のアクションシーンです。アリスの師である佐々木小次郎との訓練や現実でも冥界でも激しく繰り広げられる剣の戦いは、過不足のない描写によってはっきりとしたイメージを描き出しながらもスピード感を失いません。この映像的文章がライトノベルの醍醐味のひとつであり、本作はそれを充分に活かしています。その滑らかに流れるような戦闘描写が生き生きとしたキャラクターを読み手の脳裏に思い浮かばせ、アリスの強さとそれがもたらす爽快感を一層際立たせてくれます。
お薦めPOINTその③ オリジナル設定を活かしたストーリー
広義には転生モノと捉えられなくもない本作ですが、タイトルと設定だけで物語が終始する昨今の流行とは違い、設定は設定としてしっかりとメインである物語の土台として構成されています。しかもそれは奇抜過ぎないオリジナル性と理解しやすい王道的要素によって、読者をつまづかせることなくすんなりと世界観に浸れるよう配慮されています。その設定自体も非常によく練られていて、文面としての描写が無い部分であっても細部まで構築されているのだろうというのがキャラクターの台詞や行動から読み取れます。その上で前述した時間の流れの違いなどオリジナルの設定部分を上手く要所に織り交ぜて、ストーリーを単純な二面進行とは違った展開に仕立て上げています。
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