庵主は自分の死期を悟り、知り合いの僧正に自分の庵に来てもらう。そこで約30年前に起こした自分の罪を告白する。すでに奥方がいるさる高貴な人物と、その思い人との間の落とし種を悲田院にあずけることを命ぜられたのだ。事情がかさなり、高貴な人物の思い人から気が付かれないように赤子を悲田院に送った庵主は、自分の罪の大きさに苛まれる。思い人の女性はいなくなった赤子を探そうとするがどうしてもみつからないままだった。
時が経ち、思い人の女性は自分の運命を切り開き、自分の一座を立ち上げ、芸に邁進し、成功を収めていった。この親子の事をずっと案じていた庵主は、ある旅の一座に、その高貴な人物とにた面差しの踊り手を見て、他人の空似かもしれないと思いながらも心を救われる。庵主は自分の罪を後悔し、僧正に、自分が亡くなったら来世でこのご家族に報いることができるよう、仏に祈ってもらうよう、お願いをする。